余寒の候、立春を過ぎましたが、まだ寒い日が続きます。皆様方のご無事息災を心よりお祈りいたします。
一般社団法人⽇本動物実験代替法学会は、動物実験の適切な施⾏の国際原則である3Rs(Reduction:動物数の削減、Refinement:動物に対する苦痛軽減、Replacement:動物を⽤いない代替法への置換)の推進と普及を⽬的とし、研究、開発、教育、調査等を行う学術団体です。この3Rsの原則は、近年の実験動物福祉に関する各国の法律や指針だけでなく、国際標準や国際指針にも採⽤されています。これに則する形でEUでは2013年に動物実験を実施した原料を含む化粧品の販売が禁⽌され、2019年に米国でも⽶国環境保護庁が⻑期的に動物実験を削減することを発表しました。さらに米国では、2022年に医薬品承認における動物実験を要件から削除しました。これにより、動物を使用せずに医薬品などの開発が制度上は可能となりました。また、2023年に化粧品分野では、Animal Free な化粧品の安全性評価を研究開発し、教育を行い、行政利用を目指す国際的な非営利団体であるInternational Collaboration on Cosmetics Safety(ICCS)が設立されました。このような世界的な流れにおいて、動物実験代替法に関する研究も盛んになっており、産官学による大型の研究プロジェクトが国内外でいくつも実施されています。これらの研究プロジェクトでは、様々な領域の研究者による協働が⾰新的な技術の開発に繋がっています。特に本年は動物愛護管理法の見直しが進められており、3Rsへの関心は社会的に高まっています。したがって、本学会が、3Rsの推進並びに代替法の開発と普及に果たす役割は、今後ますます⼤きくなっていくと思われます。
これまでに眼や皮膚などの局所刺激性試験や皮膚感作性試験等の代替法がOECDや日本でガイドライン/ガイダンス化されています。そして、種々のin vitroおよびin silico手法を統合することで、化学物質のヒト安全性評価の信頼性を向上させる工夫がなされてきました。さらにin vitro手法では、生体応答をより再現する生体模倣システム(MPS)やオルガノイドの研究が、in silico手法では新たな数理モデルや人工知能モデルの研究が進めされ、体内動態予測や体内曝露予測、標的臓器特異的な毒性予測が進められています。このような背景から、本大会のテーマは「サイエンスとしての3Rsの深化と社会への波及」としました。様々な科学分野の新たな知見を取り込み動物実験代替法を深化させ、同時に化粧品から、化学品、食品、農薬、医薬品や医療機器などへ波及させることを目指し、ぜひ活発に議論していただければと考えております。
本大会は、完全オンサイト開催の予定です。すべての講演会場、ポスター・企業展示会場を1つのフロアで実施致します。また、過去2回の大会において参加者が大きく増加しており、分野も広がっていることから、会場数を増やし、より多くのトピックについて議論できるよう準備を進める予定です。本学会の会員だけでなく様々な研究領域の方々にもぜひともご参加いただき、交流を深めていただけるよう準備を進めてまいります。
皆様⽅におかれましては、本⼤会の趣旨をご理解いただき、ご⽀援とご協⼒を賜りますようお願い申し上げます。
2025年2月吉日
日本動物実験代替法学会 第38回大会
大会長 福田 淳二
(横浜国立大学 大学院工学研究院)